第25回模擬国連会議関西大会

少数民族高等弁務官の設置

議題・論点解説

 本会議の議題は「全欧安全保障協力会議(CSCE)ヘルシンキ・フォローアップ会議」における「CSCE少数民族高等弁務官」の設置です。

 会議が開催された1992年のヨーロッパ世界は、まさに過去最大の変化を目の当たりにしていました。冷戦の終結と東側ブロックの崩壊、東欧の民主化、東西ドイツ統一によって欧州に自由と希望がもたらされた一方で、「民族」を起点とする紛争や緊張の高まりも同時に発生していました。ユーゴ連邦の解体とそれに伴う凄惨な内戦は欧州史上最大規模の難民の流入を招いた一方、ソ連邦は民族主義の高揚を抑えきれずに解体、旧ソ連圏は政治的・経済的混乱状態にありました。

 そのような情勢も考慮した「少数民族に対する保護の不足が少数民族の迫害を招いているのではないか」という懸念の下で、欧州各国は「民族的少数派(ナショナル・マイノリティ)」の人権保護を推進していきました。このプロセスはCSCE(全欧安全保障協力会議)を中心に推進され、1990年に「コペンハーゲン文書」として成文化されました。

 しかしながら、その後「民族的少数派」の人権保護の試みは、情勢の激化に伴う各国の対立の激化によって停滞するようになりました。1991年には二度にわたって少数民族の権利に関する成果文書の作成が試みられましたがどちらも決裂に終わり、その一方でユーゴ紛争の激化、ソ連邦の崩壊と情勢は着々と深刻化していました。

 そのような情勢の下でオランダ大使から提案されたのが今回議論する「少数民族高等弁務官」です。これは少数民族の権利という概念と紛争予防という安全保障上の概念をミックスさせたもので、雑に言うならば、少数民族の観点から紛争予防を行おう、という新たな観点からの画期的な提案でした。結果的にこの提案はCSCE史上最高の合意と後にいわれるまでのものでした。

 しかし、この提案を実現させるには会議における各国の意見調整を経て”コンセンサス”で成果文書を採択する必要があります。過去二度にわたって決裂してきた少数民族をめぐるCSCE内の対立をまとめ上げなければならないのです。史実においてもこの提案は米英仏を始めとする強力な反対国の抵抗に遭い、会議期間のギリギリまで交渉と説得が続きました。果たして今回の会議において、どのような高等弁務官の設置が設置されるのでしょうか、それとも三度決裂してしまうのでしょうか、すべてはあなたの手にかかっています。


争点

①高等弁務官の設置とその性格

 まず一つ目の争点は、高等弁務官の設置、性格に関する議論です。もともとのオランダの提案では紛争に発展する可能性のある少数民族問題について調査・報告を行うものとして位置づけられていましたが、これに対して「なぜ設置が必要なのか」「少数民族問題だけに絞る意味があるのか」とその意義についての議論が交わされました。

 そもそもこの少数民族高等弁務官という職自体、人権の概念である少数民族の権利と安全保障の概念である紛争予防をミックスしたようなものでもあり、この二つの概念が果たして本当に調和するのか?むしろ紛争を引き起こさないのか?どのように調和させるのか?といった点が議論の的となるでしょう。

 全く別の経緯で発展してきた二つの概念の調和と新たな概念の形成という今会議の根底を成す論点です。

②活動における情報収集とテロ条項

 二つ目の論点は、いわゆる「テロ条項」と呼ばれる条項についての議論です。高等弁務官の任務は少数民族問題に関する調査ですが、調査を行う上で必要なのが、情報収集です。情報収集は政府、地元当局、NGO団体、政党など様々な組織から行われることが想定されるわけですが、当然この情報源が偏っていると、調査結果も偏ってしまうわけです。

 そのような懸念の下で、テロリストのような組織が関わる少数民族問題に関しては調査を行わない、とする規定を設けるべきだ、との主張が自国にテロ紛争を抱えるイギリスをはじめとする国々から出されました。一方でテロに関する問題のみを除外するような規定は、言い逃れの口実となりやすいとして多くの反対意見も出されたものの、結局は妥協の下で規定が導入される運びとなりました。

 テロと少数民族というどちらも明確な定義がない二つの概念をどう関連付けて主張するのかが問われる論点です。

③活動の強制力と活動に対する責任

 最後の論点は高等弁務官の活動の強制力と活動の責任です。高等弁務官の任務は調査ですから、当然当事国に自由に出入りして、自由に活動したいわけです。しかし、当事国にしてみれば勝手に外部の機関に首突っ込まれたくないという気持ちがあるわけです。そんなわけでどれほどの強制力(自由度)を持って活動できるのか、ということが争われることとなりました。

 活動に際して許可が必要なのか、活動は何かしらの機関による制限を受けるのか、そのような実務的な規定を中心に争われる論点となっています。

(変更の可能性あり)

フロント

会議監督

西鴻一|東京大学理学部|駒場研究会|老メン

議長

内田紘輔|一橋大学法学部|早稲田研究会|老メン

書記官

古村紫織|上智大学法学部|四ツ谷研究会|老メン

書記官

新地夏樹|国際基督教大学教養学部 |国立研究会|老メン

書記官

小名木勇人|国際基督教大学教養学部|国立研究会|老メン

会議詳細

議題

少数民族高等弁務官の設置

設定議場

全欧安全保障協力会議ヘルシンキフォローアップ会議・全欧安全保障協力会議ヘルシンキ首脳会談

設定日時

1992/3/24-7/8, 7/9-7/10 

使用言語
公式討議:日本語
非公式討議:日本語
成果文書:日本語

会議参加国数
史実では52か国

募集人数
25-30名程度

参加形態

シングル、ペア

全体コンセプト「再構築」

 我々の掲げるコンセプトは「再構築」です。このコンセプトにおける再構築の意味とは、皆さんが模擬国連をやる上であたりまえに思っている部分、つまり、国益や交渉、モデなどの模擬国連の基本的な要素を再考してみよう、というものです。例えば国益であれば、成果文書以外の国益には何があるか、交渉過程・交渉方法は国益とどう関係があるか、などと多くの疑問があるでしょう。

 我々の会議では、これらの基本的な要素に対する疑問を会議準備と会議行動を通じて考え、そして参加者の皆さんがその疑問に対する自分なりの答えを見つけてほしいと考えています。そして、その自分なりの答えというものが皆さんの模擬国連における個性や価値観を構成していくのだと思います。我々の会議が目指しているものとは、そのような、再構築のプロセスを通じた個性・価値観の確立です。もう自分なりの価値観があるという方は自分の価値観を見直してみる機会に、そしてまだ自分なりの価値観などないという方は自分の価値観を創り上げるきっかけにしていただきたいです。

 今回の会議ではこの全体コンセプトである「再構築」に加えて、二つの下部コンセプトを用意しています。この下部コンセプトの意義とは、全体コンセプトである「再構築」があまりにも抽象的すぎるために、実際の会議や運営がどのようにコンセプトを反映しているかを表したものとなっています。

会議コンセプト「Trust, but Verify」

 一つ目の下部コンセプトは会議コンセプトの「Trust, but Verify」となっています。意味としては、交渉相手を信頼するが、しかし、相手も人間であり国家の代表者である以上、相手の発言や提示した条件などはしっかりと確認しなければならない、といった感じでしょうか。

 会議においては、このような信頼と疑いのバランスというものが一つの大きな要素になっていると思います。参加者の皆さんにはこのバランスをどう考えるか、それを基本的な要素の再構築の下に考えていってほしいと考えています。

広報・運営コンセプト「Disclosure」

 二つ目の下部コンセプトは広報・運営コンセプトの「Disclosure」です。このコンセプトは広報や会議運営におけるフロントからデリに対する関わり方を表したもので、「Disclosure」とは一般に情報公開という意味です。

 つまり、皆さんが実際に我々の会議の下で「再構築」を行う上で、フロントの我々が何を考えてコンセプトを設定したのか、会議を設計したのか、それらの意図が伝わるような積極的な情報公開をしていきます。そして我々がどう会議を再構築したのかを伝えていきます。

 全体コンセプトに『再構築』というものを掲げた以上、我々がどのように再構築をしたのか、ということを全員に知ってもらう必要があるということ、そして模擬国連の枠組みを基礎から見直すという難題に対し、フロントが少しでも多くの示唆を与えることができたら、と考えています。

①情勢と深く関連した規範形成

・本会議はヨーロッパ世界の劇的な変動と緊張の激化という情勢に連動する形で現れた少数民族高等弁務官という職の設置を議論します。そのため、議論内容自体は高等弁務官という職についての議論や対立する概念についての議論がメインとなりつつも、その背景や議論の端々には常に自国や欧州が抱える民族問題が念頭に置かれるでしょう。そのような意味で情勢系会議にありがちな緊迫感と概念系会議にありがちな丁寧な合意形成という両方の側面を持った会議になっていると考えています。

・また、CSCEという地域機構を舞台とした会議であるため、より欧州地域の実情に迫る、いつもの模擬国連とは異なる舞台での会議となります。さらに、1992年という時代もこれまでの模擬国連会議ではあまり扱われてこなかった時代であり、欧州の政治的バランスが激動した時期にあって各国がどのように欧州を「再構築」してゆくのかが問われます。

・加えて、情勢の緊迫感という要素を増すために、会議の進行に合わせて当時の情勢に関するプレスなどを出そうと考えています。情勢の変化によって各国の態度に変化が現れる可能性もあるかもしれません。

②準備へのサポート

・コンセプト紹介において述べたように、再構築のプロセスは会議準備と会議当日の両方で行われます。このプロセスを速やかなものにするためにフロントの考えが伝わり、デリが自分なりの答えを出すことができるような情報の公開を目指していきます。

・具体的には、メンターにおいては国益や戦略の設定において様々な疑問を提示したり、フロントから何かしらの答えを提示するのではなく、考えを深めるための疑問や課題を提示することを目指しています。

・また、会議関連資料については、ネット上の検索でなかなか発見しにくいこともあり、可能な限りフロントから提供を行おうと考えています。

・BGの構成については可能な限り会議に必要な知識や概念、情勢について網羅的に見ることができ、また会議における議論が見えるような物になるでしょう。

会議設定がCSCE(全欧安全保障協力会議)であるため、国割はヨーロッパ・北米・中央アジアの国々のみになります。

北米・西欧・北欧諸国

・Netherland

・United States of America

・United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland

・France

・Federal Republic of Germany

・Austria

・Italy

・Sweden

・Spain

・Canada

東欧諸国

・Czech and Slovak Republic

・Hungary

・Romania

・Croatia

・Greece

・Turkey

旧ソ連諸国

・Russian Federation

・Ukraine

・Estonia

・Georgia

・Armenia

・Azerbaijan

(変更の可能性あり)

 参加者の対象は特にありません。様々な価値観、個性を持つ人々が参加し、それぞれが再構築を行い、自らの価値観、個性に目を向けることは他の参加者にとっても大きな示唆を与えることになるでしょう。そうすることによってより我々のコンセプトが実現に近づくと考えています。

皆さんこんにちは、会議監督を務めます駒場研究会老メンの西鴻一と申します。

 まずは今大会ならびに我々の会議に関心を持って下さりありがとうございます。このページでは、我々の会議の設計と考え方のアウトラインをなるべく皆さんに伝わるよう書いたつもりです。しかし、字数の都合上すべてを伝えきれたわけでは無いので、もし疑問に思った点やより詳しく知りたい点があれば会議のSNSやアプライ前メンターなどで問い合わせてください。

 さて、皆さんに伝えたいメッセージですが、ここではコンセプトを中心に書いていこうと思います。我々のコンセプトは(コンセプト紹介では小難しいことを言っていますが)ざっくり言ってしまえば「あたりまえを疑え」という感じです。旧メン以上ならばいままで模擬国連をやってきたうえで当たり前だと思っていた要素、自分の模擬観の根底にある要素から疑ってかかってほしいということです。そして、新メンにとってはこれまでに学んできた模擬国連のざっくりとした形式それぞれ(国益、モデ、交渉、、、)にはどんな意味があるのか、ということを考え、知って欲しいということになります。

 なぜそんなことをするのかと言えば、そのプロセスを経ることによって、より自身の価値観、個性が深まり、確固たるものとなり、そして、その深まりこそが模擬国連により一層の楽しさをもたらすからだと考えています。もちろん、模擬国連というアクティビティに対する考え方は十人十色ですから、再構築した結果として出される答えも十人十色でしょう。私の再構築の結果とあなたの再構築の結果は全く異なるかもしれません。しかし、そのような異なる考え方を持つ人々がいるからこそ、模擬国連というコミュニティは面白く、そして自身の再構築のプロセスにも示唆を与えてくれるのではないでしょうか。

 そういうわけで、私としては出来る限り様々な考え方をもつ参加者の方々に来て下さると嬉しいです。丁寧な議論がしたい人も、死活的国益を追求したい人も、信頼に基づく交渉がしたい人も、議題に惹かれた人も、コンセプトが気に入ったよという人も、どなたでもお待ちしております。

駒場研究会 西鴻一

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西会議

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Instagram:@kmunc25_hcnm

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