第24回模擬国連会議関西大会

文化の多様性に関する世界宣言

議題・論点解説

文化の多様性に関する世界宣言は2001年にユネスコ総会で採択された文書です。

冷戦後,アメリカ文化はさらに世界中に輸出され,「文化帝国主義」と呼ばれるほどの影響力を持ちました。その典型がハリウッド映画です。

その一方,かつて栄華を誇ったフランス映画は国内外で競争力を失いつつありました。フランスのアイデンティティと産業の両方が危機に瀕したのです。

そこでフランスは文化産業における輸入を規制しようと考え,自由貿易が推進されていくGATT交渉の中「文化的例外」と称して文化的な商品に対する保護の容認を提案します。しかしその成果は乏しいものでした。国際経済法の範疇で文化の特別性を主張するのには限界があったのです。

一方その頃,ユネスコではS.ハンチントン『文明の衝突』的な破滅を防ぐために,文明間の対話政策が取られていました。この流れと国際環境法の生物多様性にヒントを得て,フランスはユネスコでの議論を呼びかけます。

「多様な文化なくして人類は生きていけない。市場経済に任せていては多様性を失う」という訴えは共感を呼び,交渉の末に宣言はコンセンサス採択されました。

しかしその後,宣言を条約化しようとする機運が盛り上がりますが,ユネスコに復帰したアメリカに猛反対されます。交渉は大揉めし,条約には宣言の一部の内容しか盛り込めませんでした。アメリカや日本は現在も批准していません。

ではどうすれば未批准国を説得できるようなもっといい宣言がつくれたんだろう?

確かに規制しないと文化は消失してしまう。でも自由の中で文化が混ざり合うことこそが文化を発展させるんじゃない?ならばどんなことを宣言するべきなんだろう?

9.11の直後,文明の衝突が真実味を帯びてしまった時代において,こうした問題を論じていただきます。

以下大まかな争点です。

抽象的争点:文化はいかに創造されるか?間文化主義と多文化主義の関係とは?

・市場経済は文化の伝統的継承にどのような影響をもたらすか?(文化帝国主義/新自由主義v.s.社会的市場主義)

・市場経済は文化の創造的交流にどのような影響をもたらすか?(文化ナショナリズム/文化保護主義v.s.グローバリズム/経済的自由主義)

具体的争点:文化政策はどの範囲で,いかに構想されるべきか?

・自由市場経済の負の影響を防ぎ,かつ正の影響を享受しうる文化政策とはどのようなものか?

・そのような文化政策をいかに宣言すべきか?

フロント

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会議監督

松本奎|早稲田大学政治経済学部3年|早稲田研究会|老メン

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議長

大野秀征|慶應義塾大学法学部3年|日吉研究会|老メン

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会長

白澤里菜|同志社大学経済学部3年|京都研究会|老メン

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秘書官

佐伯恵怜菜|早稲田大学政治経済学部3年 |早稲田研究会|老メン

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秘書官

樋口実波|早稲田大学教育学部4年|早稲田研究会神メン

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秘書官

齊藤瞳|大妻女子大学文学部4年|四ツ谷研究会|神メン

会議詳細

議題
文化の多様性に関する世界宣言

設定議場
第31回UNESCO総会

設定日時
2001年10月23日〜2001年11月2日

使用言語
すべて原則として日本語

募集人数

25名程度
シングルを推奨しますが,ペアでの参加を拒むものではありません。

comme dialogue et non comme monologue

独白ではなく,対話のように

 みなさん,会議中にこんな経験をしたことはないでしょうか。自分の主張を擁護しようとするとき,相手の言葉に応答することなく,全く同じ説明を繰り返してしまうこと。あるいは,勝ちにこだわりすぎるあまり,相手を貶めようとする気持ちが心を覆ってしまうこと。

 僕は結構こうなってしまいがちで,その度に自分に落胆していました。排他的で攻撃的な態度は,模擬国連が持つ可能性の多くを阻害してしまうと感じていたからです。そして,この感覚を元にコンセプトを決めました。なので,一旦この「模擬国連が持つ可能性」について説明しますね。

 ある外交官の方は,交渉は70:30ではなく55:45,ひいては80:70に持ち込むことこそが成功だと仰っていました。大使は国の代表として,国民の利益や幸福を最大化するのが仕事です。ですから,他者の意見の良き点をも取り込む創造力をもって80を目指すのが理想なはずです。それに,そうした創発的な話し合いができた方が,得てして楽しく,予想だにしなかった興味深い結論に辿り着けるものです。

 また,こうした包摂的態度は相手を嫌な気持ちにさせません。国際社会において,外交的な合意は国家による履行があってこそ効果を発揮します。逆に,結論が納得感なきねじ伏せである時,その合意は効力を十分に持ちません。それどころかしばしば将来の破滅を招いてしまうことは歴史が証明しています。ですから,議論過程の正統性と合意の腹落ちした納得感が重要となります。

 なので,本来はこうした創発的な包摂を実現できる,参加者全員が知的刺激と納得感を得られる議論交渉が望ましいはずだと思うんですよね。僕たちフロントはこれをdialogue,「対話」として定義します。対置されるのは冒頭に書いたような状況で,それをmonologue,「独白」的であると考えています。

 ところが,模擬国連の議題はしばしば歴史上の激しい対立を取り扱いますから,こうした会議を実践するのはどうしても難しい面があります。

 でも,そんな困難さの中でも,ひとたび対話的でいられるスキルを身につけたらいい議論を体験しやすくなるんじゃないか。ひょっとしたら模擬国連の外でも,生きやすくなったりすらしないだろうか。

 そんな思いから敢えて,この会議では徹底して「対話」することに重点を置いてみました。対話に向き合い続ける夏,きっと貴重な体験となることをお約束します!

この会議の特徴は,次の5つです。

 

 第一の特徴は,史実を「超える」体験です。【議題論点解説】でもお書きした通り,「文化の多様性に関する世界宣言」は,史実において過激な争点を持つことのないまま採択された文書です。しかし,その数年後に議論された「文化的表現の多様性の保護及び促進に関する条約」では深刻な対立に陥ってしまい,合意を十分に生むことのないまま採択されてしまったという未来での失敗を持っている宣言でもあります。ですから,今回みなさんには史実の合意を「超え」てほしいと思っています。つまり,史実で実現できなかったことすらも実現できるような文言を志向していただきたいと考えています。

 そこで求められるのは,時間に追われる中、相手を黙らせることによって対立点を消していく作業の効率性や,史実を再現するバーターゲームの巧みさではありません。議題について深く考え,また多様な意見を尊重しながら混じり合わせていくことによる創造的な対話を,模擬国連において実践してみてほしいと考えています。もちろん,議題と会議設計がそれを後押しします。

 

 第二の特徴は,議題そのものが対話を意味している点です。文化の多様性は「文化が消滅しないようにする」マイナスの防止と「文化が混じり合うことで創造性が発揮される」プラスの促進の両方によって実現されます。宣言採択当時,ユネスコ事務局長の松浦氏が”The cultural wealth of the world is its diversity in dialogue”と記した通り,この考え方は対話に例えられます。つまり,他者の表現を消すのではなく,むしろ混じり合わせることによって価値を最大化するという意味において,この会議において目指される議論のあり方とこの宣言において目指される社会のあり方は一致するのです。

 みなさんの会議準備においては,自国の文言とその背景にある文明観や哲学を考え抜く中で,自然と議論の方針や対話の姿勢が形作られていくような体験をしていただきたいと考えています。準備期間を含めると一ヶ月強,とことん「対話」と向き合い続ける経験はきっと貴重なものになるはずです。

 

 第三の特徴は,対話を可能とする会議設計です。先述の通り,この宣言は深刻な対立がなくコンセンサス採択された文書です。これは見方を変えれば,議場内に共通の前提となる認識が多く存在しているということになります。一方で,【議題論点解説】にも記した通り,今回の議場では一貫して「経済的な自由と文化の保護は矛盾しないのか」という一つの争点について議論をしていただきます。

 共通の前提を持ちつつ,単一争点に時間をかけられる。こうした設計の元,対話的な議論交渉を行っていただきます。

さらに,会議の外においてもこれらの価値を最大化します。

 

 第四の特徴は,会議の三日目にディスカッションのフェーズを置くことです。大使としての議論を終了(あじゃーん!)した後,フロントの簡単なレビューを経て,一人一人が議論・交渉を経て感じたことをざっくばらんに話す機会を設けます。国連を模擬したあとは国連について話しやすくなり,文化を議論したあとは文化について話しやすくなり…といった具合に,普段は考えもしなかったこと,話そうともしなかったことについて対話・議論する機会となるはずです。会議の展開から模擬国連それ自体に至るまで,みなさんの多様な感想はすべてそれぞれに価値があるものとして受け止められ,また混じり合うことで創造的発想へと展開していくことでしょう。

 模擬国連の持つ「対話による相対化/相対化による対話」の効果を最大化することで,翌日からの生活や,その後の模擬国連人生をより朗らかで豊かなものにできるような関西大会を提供できればと考えています。

 

 第五の特徴は,従来より多様な勉強会の提供です。争点解説はもちろん,文化多様性やユネスコに関するさまざまな事柄を扱うつもりです。また,成果文書の文言作成や交渉に関するワークショップを行います。これにより,創意工夫のヒントに出会いやすくするとともに,会議参加後の学びの広がりを確保します。

 さらに,この会議では事前会合と勉強会の中間のような会をひらきます。ここでは準備状況や各国が考えていることを議長統制のもと共有していただきます。会議準備を早く終わらせるプレッシャーを与えるためではなく,むしろ準備した他国リサーチや戦略が外れてしまうことを防ぐために,半分デリ半分参加者の形で情報共有をしていただく会です。全国大会は得てしてハードルが高くなりがちですが,フロントサポートは懇切丁寧に,参加してくださる全員がドロップアウトすることなく楽しめるように全力を尽くすことをお約束いたします。

 

 これらの一貫した特徴によって,”comme dialogue, et non comme monologue” な会議を提供します。

日本, フィリピン, インドネシア, 中国, 韓国, ロシア, インド, ドイツ, フランス, アイスランド, エジプト, マリ, セネガル, 南アフリカ, アルゼンチン, ブラジル, メキシコ, オーストラリア, International Network for Cultural Diversity

 

以下, 国数次第で追加する国の例

スウェーデン, トルコ, ウルグアイ, クロアチア, ギリシャ, UK, ベルギー, スイス, ポーランド, ニュージーランド

 

※変動する可能性があります。

このページをご覧いただき本当にありがとうございます!会議監督を務めるわせけん老メンの松本奎です。

 

抽象的で冗長な書き振りに飽きてきた頃でしょうから(ごめんなさい),フランクにお伝えしますね。

 

模擬国連人生(大袈裟ですが,老メンにもなるとそんな気分すらしてきてしまうんです…)において,関西大会というのはいつでも本当に特別な機会を与えてくれるものです。

 

自分自身が過去2回の大会に対して特別な思い入れを持つだけに,皆さんにもまた妥協なく,確信に至るまで逡巡を続けていただきたいとすら思っています。

 

いずれの会議もいい会議,他の会議監督もみんな尊敬する同期ばかりです。その中から選んでいただけるだけの説明責任を果たす義務が僕たちにはあると思っています。ですから,会議設計に頭をフル回転させてきました。

 

それにSNSも,このページの解禁以降本格的に動いていきますよ!是非見てみてくださいね。そして何より,少しでも疑問に思うことがあったら,いつでも質問してください!SNSでもお話し会でも,世間話がてら来てくれたら嬉しいです。

 

そして,最後は直感ですよね。ビビッ!と来たら,是非アプライしてみてください!



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